出会い系にいる人妻の目的は不倫だと考えるのが普通だが、その人妻は一風変わっていた。
「別に愛人とか恋人が欲しいわけじゃなくて、友達がほしいだけなのよ…だから相手は女でもいいし、男でもいい。年上でも年下でもいいの…気が合えばね」
「僕でいいんですか」
「話し相手になってくれるんなら」
なんか違和感があったが、人妻と知り合いになれるなんて願ってもないことだから、二つ返事でOKした。文章から察するに体の関係を否定しているようだが、人妻の本音なんてなかなか表に出てこないし、俺がその本音を引き出してみせると、意気込んだ。
「メル友でもいいんですか? このまま」
「会ってもいいよ…ただしお茶だけね。変なこと考えないでよ」
(変なことを考えているのはそっちじゃないのか)
夫以外の男とこっそりお茶を飲むのだって、厳密にはよくないことだ。
だが人妻の本音に迫る第一歩なので、快く会いに行く。
お茶を飲んで会話するうちに話題が「不倫」になった。その話になると、彼女は饒舌になった。
「陰でこそこそ変なことする人って最低よね…夫や妻を裏切ってさ、他の異性とエッチなことしてさ、それで自分がさも正しいような顔をしてさ、あのほら、昔たくさんドラマに出てて、歌も歌ってた、誰だっけ」
「○○○○○さんですか?」
「そうそう…。あいつ自分が何をしたのかぜんぜんわかってないよね。不倫がお洒落だとでも思ってるのかしら」
会話の中で彼女は不倫する人間を徹底的に罵倒した。もしかしたらこの人妻は正義の味方なのではないか。だとしたらこの人妻とのセックスはない。
だが騙されてはいけない。
人妻の本音はそう簡単に暴けるものではない。
ストレートに聞いてみる。
「奥さんだってやってみたいんじゃないですか?」
「何を?」
「不倫」
「何言うのこの人…私がなんで」
「奥さんみたいな素敵な人と恋に落ちてみたいな…エッチなことして気持ちよくなってみたいな」
「やめなさい」
「ああ、奥さん好き好き好き…」
彼女を徹底的に刺激した。
それから彼女はなぜか口数が少なくなり、不倫を否定する言葉も出なくなった。
その夜、メールが来た。
「今度いつ会える?」
「奥さんのご希望に任せます」
「だったら明日…いい?」
「会ってまたお話するんですか」
「うん」
「どんな話?」
「また話して欲しいの」
「何を」
「私のことをどう思っているかって。もっと聞きたい」
そろそろ本音が出てくるはずだ。
実はその「明日」は明日なのだ。
明日その人妻に会いに行く。
だいじょうぶ、彼女は必ず落ちる。