「パスタの麺と一緒にバジルペーストも買ってきてね」
彼女のアパートでランチをすることになったのだが、食材の一部を僕が買っていくことになった。最近、人使いが荒い。年下の男をだから頼みやすいのかもしれないが、少し厄介なことになっている。
「バジルじゃないとだめなの? ボンゴレがいいな」
「私はパスタにうるさいのよ…君も覚えといてね、私はバ・ジ・ル…それとワインはロゼ。わかってる?」
まるで新婚夫婦のような会話だ。
出会い系で彼女と知り合ったのだが、もともと僕は数回エッチさせてもらって別れる気でいた。年上の女性が嫌いなわけではないが、長く付き合うなら年下がいい。彼女はとりあえずの性処理の相手でしかなかった。
ところが出会って一週間ほどしてセックスしたとき、彼女が処女だったことが判明した。
昨今はアラサー処女が珍しくないと聞くが、まさかその色っぽい年上女性が処女だとは思わなかった。
処女相手のセックスはセックスではないと僕は考えている。互いに気持ちよくなってエクスタシーに達するところにセックスの歓びがあるというもの。僕ははずれを引いたような感覚でいた。だが彼女にとってすれば貴重なアラサー処女を捧げた相手。その行為自体も、僕自身も特別な存在になっているようで、初体験のその日からまるで姉さん女房のようにまとわりついてくる。
「私ね、年下でもいいなって思っているのよ。それに3年くらいなら関係ないわよ。だってあなたが40歳になっても私はまだ43歳よ。釣り合うわよ、きっと」
そんなに先まで交際する気か。もしかしたら結婚する気か。
本音では関係を解消し、再び出会い系で新しい女性を探したいところだが、彼女と一緒にいると別れられないオーラが漂ってきて、とりもちにかかった鳥のように動けなくなる。
風味のいいバジル仕立てのパスタを食しながら、これからのことを考え、少し憂鬱になる。
彼女がワインを注いでくれたとき、豊かな胸の谷間がむにゅんと揺れるのが見えた。
(うう…エロい)
これからどうするか、とりあえずセックスしてから考えよう。