人間、朱に交われば赤くなると言われる。即ちその環境になじめば、その環境にふさわしい人間になる。山に住めば狸やキジバトにも慣れ、毒キノコを見分けられるようになり、どこにケモノ道が走っているか想像できるようになる。海沿いに住めば泳ぎが得意になり、日に焼け、魚釣りが好きになり、サザンの曲を覚えるだろう。
何が言いたいか。
出会い系に登録してその環境に慣れてくれば、見知らぬ男に会う不安がだんだんと失せてくるということだ。
最近、就活中という女子大生とYYCで会った。彼女のメールは軽妙洒脱で、おそれを知らなかった。俺がどんな男なのか知らないのに、平気でプライベートな情報を送ってくる。
「俺に会ってもいいと思ってる?」
「いいよ……楽しそうな人だしね」
「そんなことがなんでわかるの」
「半分は私の期待かもね……希望的観測」
彼女は出会い系よりOB訪問のほうが怖いらしい。就職活動でまさか男女の関係を迫られるなど考えてもいないので、もしもそうなったらパニックになるだろうと彼女は言う。OB訪問という「環境」にセックスが出現するなどと就活中の女子大生は考えない。山の中にヒラメやカレイがいるわけがない。そりゃパニックだろう。
その女子大生とは、すぐに会った。
お茶を飲みながら会話した。
「出会い系もけっこう怖いんじゃないの?」
「こっちもその気になれば怖くないよ。地がでるというか、素直になれるというか、出会い系になじむ女になれるんだ……。これがOB訪問だと自分をノーマルに作ってるから、アブノーマルなことされたら超怖くなる」
明るい女子大生だった。
「明日エッチしよう」
「なんで明日なの」
「明日のOB訪問とか言ってたよね……リクルートスーツ着てるのを見たいから」
「コスプレ趣味? やだわ」
「明日はOB訪問のあとに出会い系になじむ女になってきてくれ」
次の日、リクルートスーツを着ている彼女をラブホで抱いた。服の上から胸を揉んで、スカートに手を入れていやらしい部分をイジった。
「あん……ああんっ」
「OBからこんなことされたら大変だよな」
「死んじゃう」
出会い系には性欲丸出しの明るく素直な女が多い。
ラブホの女子大生は、リクルートスーツを着ていたが就活とは無関係な出会い系の女だった。